9.ビジネスは農業
いつも携帯電話が例になって恐縮ですが、携帯電話を例にして、ビジネスは農業という話をしたいと思います。
これはどういうことかというと、携帯電話の技術の進展は、1980年代のアナログ方式を第1世代(1G)として、90年代のディジタルPDC世代(2G)、00年代のW-CDMA(3G)のように10年ごとに変わっています。ひとつの世代は、基礎研究から実証実験、商用実験、商用化と繋がっていきますので、10年代の第4世代は、まだまだ市場から見るとまったく見えないものですが、水面下ではすでに実証実験を終えている段階と言えます。
同様に、商品に搭載する要素技術の開発には約5年掛かります。アイデア段階、原理試作段階、性能向上、商用化のフェーズを辿りますが、これだけで5年掛かります。決して市場にあるものを思いついたように採用している訳ではありません。
商用機の開発でも、だいたい14~15ヶ月前に仕様を決めます。商用機の色については約3~4年前に決まっています。というのは、色はアパレル業界が仕切っていて、糸を選んで染めて、生地を織って、洋服に仕立てるというサイクルが3年以上掛かるからです。つまり、今年の秋はXX色が流行る!というのは3~4年前に決まっているのです。これに携帯電話も車も、いろんなものが合わせ込んでいるのです。
大事なことは、このサイクルです。
出来上がったものだけを探して使っていたのでは、アイデアはすぐに枯渇してしまいます。
やはり、種を蒔いて、水や肥料をやって、そして刈り取る、このサイクルをきちんと回し続けないといけないわけです。つまり、携帯電話のビジネスは農業に一番よく似ているということになります。
私たちの仕事も同じです。いきなり買って下さいといっても難しいでしょう。じっくり種をまいて、しっかりフォローして、刈り取る、そんなサイクルを、是非、繰り返してほしいと思います。