7.継続は力
ところが、事業はここで終わらない。継続してなんぼである。1回、2回の成功では事業とは言えない。如何にしてこれを続けるか。これには種まきが必要である。技術の種まきが必要である。目玉の種まきが必要である。新規の研究開発を伴うアイデアの実現には5年かかる。ある程度見込みがあるものでも3年はかかる。刈り取ってばかりいるとすぐに荒れ地になってしまう。目玉技術といっても市場で新鮮性を保つのは僅か半年。長くても1年。次々に種まきし続けなければならない。かといって闇雲に種まきしたのでは育たない。目玉技術は市場要求に対して早すぎても遅すぎても受け入れられない。ベストのタイミングで市場投入できるように市場を予測して、適切なテーマを割り出し、必要な費用をかけて研究開発をしなければならない。当たるか当たらないか分からない賭は事業ではない。最大効率の下に開発を続けなければならない。そこには10年スパン、5年スパンのシナリオがある。このシナリオなしには事業は進められない。
人の育成もそうである。一朝一夕に技術者は育たない。私たちは、社内公募という魔球も使わせて頂いた。幸いにして落伍者はいない。ディジタル3号機の完成段階で技術者は80名であった。これが3倍になった。新人投入に関しても格別の配慮を頂いているが、公募者、中途者、配転者、新人、完全な雑居ビルである。混成部隊である。これが実にいい。ホイと入ってきても何にも違和感がない。自分で頑張らないとおいていかれる。かくいう私が9年目の配転者であるのだから、3年もいれば立派な携帯電話技術者である。というか、そうあらねば生きていけない。モチベーションの高い職場である。
同様に、トップマネージャの考え方が直接的に反映する。すぐに反映する。なにせ単一製品なのだから当然である。とくに、中長期計画に顕著に現れる。某氏は人員を一切増員せず開発の効率化だけで事業効率の向上を目指した。また、某氏は、その反動で、徹底的に膨張作戦をとった。いずれも問題があった。更に某氏は猛烈なリーダーシップの下に、自己責任、自己完結を目指した。また、某氏は、どんどん権限委譲を行った。毎年見直す中長期計画は、トップマネージャの性格で一変する。これだけ市場が膨張する世界では先に手を打った者が勝つ。先にマスマーケットを取った者が加速度的に勝つ。このためにはじわじわ勝っていく作戦では手遅れである。先読み先読みをしながらどんどん帝国主義的事業化作戦を展開したものが勝つ。その先例はNo社、Er社など枚挙に暇がない。彼らの作戦を勉強すればいい。もちろん、運も必要だし、ツキも必要である。しかし、それだけでは心許ない。戦略、シナリオ、ストーリーが必要である。