26.特別講座5(ケチは美徳)
経営の鉄則は「入りの拡大を図り、出(いずる)を制す」ことにあります。入りの拡大に熱心な人は多いですが、出を制さないために、せっかく大きくなった会社をつぶしてしまうことは多々あります。規模が大きくなると、たくさんの利益がでると考えがちですが、ほとんど同時に固定費が増えています。その固定費の増え方が多いと利益率が下がってきます。そうすると、ちょっとした売上げダウンで、大きくなったが故に倒産も早まるといった現象が起ります。大型投資をして失敗するのは、ほとんどこのパターンです。出を制してこそ利益の拡大が図れます。
下名は、予算外の開発費が必要になると、課員の机をあけて余った事務用品の供出を求めました。鉛筆、ボールペン、消しゴム、クリップ、輪ゴム、はさみ、定規などたくさん集まります。いったいどれだけの無駄をしているか分かります。余談ですが、これを経理部門に持っていって、無駄をなくして、開発費に回せと口説くことしていました。下名が余った事務用品を集めだすと、何か開発をはじめるなと読まれてしまっていました。余談はともかくとして、いかに無駄が多いか、ちょっと回りを眺めてほしいと思います。こまめに消灯する、裏紙を活用する、パソコンをつけっぱなしにしない、どんな小さいことでも、ケチは美徳です。
一般に、規模が拡大すると、固定費が増えるといいました。なぜかというと利益を隠そうとするからです。なにも現金を隠すわけではありません。将来必要になるであろうことに先行投資することによって利益を隠すのです。知らず知らずにジャストインタイムではなくなっています。研究投資が過大になったり先行しすぎたり、市場調査が派手になったり、過大な設備投資をしたり、無謀な海外投資をしたり、いろんな形で固定費が増える方向に作用します。経営者は、こういう実態を綿密にチェックし見破らないといけません。税金を払うぐらいなら投資すると考える経営者は多いですが、その考え自体が会社を弱体化するのです。経営者は堂々と税金を払って、固定費が水ぶくれにしないようにしなければなりません。
特別講座5(ケチは美徳)