17.米国事業、挽回か撤退か


01/4国際統括部門になった。
 
悪いときには悪いことが重なるものだ。堅調であった米国事業が極端に悪化した。品質問題の発覚である。約束した新商品も遅れた。これをきっかけにして、一気におかしくなった。
 
これではだめだと、米国の事業責任者を交代するしかなかった。この時点では、挽回すべきか撤退すべきか議論伯仲であった。当然、新任の事業責任者は挽回の作戦を考える。冷静に事態の進行を見守っているスタッフは、撤退に傾く。方向がきまらない。コーポレートは、連続する失態にしびれを切らし、米国事業の撤退を迫る。このままでは、自浄作用がないとして、コーポレートが乗り込んでくる。その前に、自ら、ビジネスとして判断することが求められる。
 
その状況を腹に持ちつつ、挽回の一縷の望みも捨てきれずに、米国に飛んだ。新任の事業責任者と一緒にオペレータに会った。一緒に飯を食っているのに、まったく話に乗ってこない。お客様であるオペレータから、まったく信用されていないことが分かった。これでは売れないし、買ってもらえない。事業の継続は無理だと思った。
 
方向が決まった。後は、撤退のシナリオを明確にして、整斉と進めるしかなく、ただただ、あきらめるしかなかった。新任の事業責任者は、淡々と、見事に撤退の作業を進めた。ビジネスは信用関係の上に成り立つ、この当たり前のことが崩れた。撤退には約1年、巨額の費用が掛かった。事業を始めるのは易しい。事業を閉じるのは、これほど難しいことはない。大きな損失が伴う。