閑話休題(61)現代語訳「学問のすすめ」福沢諭吉 /斉藤 孝(訳)=ちくま新書


第3編 愛国心のあり方(明治6年12月出版)

 

国とは、天地の間に生きる人間の集まったものであるから、お互いにその権理を妨害するという道理はない。わが日本でも、今日の状態では、西洋諸国の豊かさにはおよばないところもあるけれども、一国の権理ということでは、少しも違いはない。道理に背いた非道なことをされた場合には、世界中を敵に回しても恐れることはない。「日本国中のみなが命を投げ出しても国の威厳を保つ」というのはこの場合のことだ。

 

いやしくも国を愛する気持ちがあるものは、政府、民間を問わず、まず自分自身が独立するようにつとめ、余力があったら、他人の独立を助けるべきだ。父兄は子弟に独立を教え、教師は生徒に独立をすすめ、士農工商みなが独立して、国を守らなければいけない。

 

要するに、国民を束縛して、政府がひとり苦労して政治をするよりも、国民を解放して、苦楽を共にした方がいいのではないか、ということなのだ。