閑話休題(35)映画「剣岳、点の記」
一つ目は映画の話です。私は相変わらず同じペースで映画を観続けていますが、最近の映画の中でのお勧めは「剣岳、点の記」です。
点というのは三角点のことで、点の記とは三角点を作ったときのその場その場の記録のことです。三角点は地図を作るときに必要なわけですが、どういうやり方かというと、1km角毎に1箇所の割合で三角点を設け、その三角点同士の距離と仰角を測ることによって、位置と高さを計算して、地図データを得て、それをベースに地図を作る訳です。今なら、ヘリコプターを使ったり、GPSや衛星を使ったり、いろいろできますが、つい最近までは人間がいろんな機材を担ぎ上げて三角点を作って測っていましたから、明治中期の頃までは、剣岳あたりの山岳地帯は地形が厳しすぎて三角点が設置できないため、詳細な地図が作れていませんでした。特に剣岳は立山信仰の地獄の山、登ってはいけない山とされ、実質的に未踏の山でしたので、地図的には空白の地帯になっていました。
映画は、この未踏の剣岳とその周辺に三角点を設ける話で、新田次郎の原作、これが実話ですが、それを映画化したものです。立山、室堂、美女平などに登ったことのある人はイメージできると思いますが、秋の紅葉の素晴らしさ、雲海、冬のブリザードなど、非常に迫力のある映像でまとめられています。物語、人間模様も非常に丁寧に描かれており、加えて、CGを一切使わず、スタントマンも使わず、全部俳優が演技し、実写で撮った監督こだわりの映像ですので、本当に一見の価値があります。是非、観てほしい映画だと思います。