閑話休題(12)唄子師匠の話


開演15分前、すでに会場は満席。となりの部屋にもモニタTVを引き込んで聴講。各支社、各支店にもTV会議システムを使って、ライブで中継。

 

後ろのドアが開いて、大きな拍手の中を師匠入場。トレードマークの帽子。黒地に白い大きな模様の洋服。意外と小さい(背が低い)。80歳だというのにうわさにたがわずシミのないきれいな肌。昇壇したとたんに「壇をもっと高くしてほしい。これでは後ろの人が見えん。」と。大慌てでスタッフが直す。この間に、ヒールを脱いでスリッパに。

 

3畳一間、酒乱でちんどん屋の父の話から始まって、子供時代、某製作所&保険オフィスガール、芸能界入りのきっかけになった病院慰問の素人芝居、入ったばかりの劇団で大きな役を自分の力でとった話、4人の旦那の話、最初の旦那の子供を産んでみじめだった子連れ女優時代の話、2番目の旦那の鳳啓助師匠との出会いと生活、離婚しながらの仕事の遂行、6ヶ月の重症の骨盤骨折をしながら仕事を完遂した話、などなど、師匠のまさに波乱万丈、私の履歴書、ほんとうに涙しながら、ときには芝居調、ときには漫才、ときには歌をいれての大熱演で、ひとりの私語も許さない「緊張と緩和、涙と笑いの一人芝居」。

やはり、漫才の師匠で大女優。見せることで聴衆をひきつける商売。最初に壇を高くした意味はここにあった。

 

話の中にでてくる教訓は、以下。

・責任を果たせ。

・仕事を全うせよ。

・気力・根性が必要。

・自分で決める。

・浮気はするな。

・人を大事にせよ。

・時間が怨念を流す。

 

最後の話は、やはり鳳啓助師匠。自分を世の中に出した人、自分を人気者にしてくれた人。夫婦としてはうまく行かなかったが、やはり芸を導いてくれた恩人。長い人生の中でいろんなことが昇華されて、〆の言葉は「皆さんの胸の隅っこでいいから、鳳啓助という人がいたことを覚えておいてやってほしい。」

 

人生には、陰と陽、愛と憎、いいことと悪いことが常に同居しているが、最後は悪いことは忘れて、元気よく、力強く、前向きに生きていくことが大事、そんなメッセージだと受け止めた。